COLUMN

コラム

日本と中国の意匠制度の相違

目次

日本と中国の意匠制度は、主に2点が違います。日本と中国の制度の違いについて、メリットおよびデメリットを説明します。

上記の表に関して、日本と中国の意匠制度は、主に2点が違います。一つは審査制度の違いで、もう一つは秘密意匠の違いです。

次に、日本と中国の審査制度と秘密意匠の違いについて、メリット・デメリットを説明します。

審査制度

日本

日本における意匠出願の審査は次のような手続きで行われます。

まず、意匠登録を受けるためには、出願書類が所定の書式を満たしているかどうかの形式的な審査(方式審査)が行われます。この方式審査を通過した出願に対しては、審査官による意匠登録要件を満たしているかどうかの審査(実体審査)が行われます。すなわち、方式審査と実体審査が行われます(意匠法第16条、第17条を参照)。

【メリット】
実体審査によって意匠の優れた創造性や工業的利用可能性が評価されるため、高い保護レベルが得られます。登録後の意匠の有効性が高く、他者からの侵害を防ぐことができます。

【デメリット】
審査に時間がかかるため、意匠権の取得までの期間が長くなる場合があります。審査に合格しない場合、意匠権を取得できないリスクがあります。

中国

中国における意匠出願の審査は、以下のような手続きで行われます。

意匠登録手続きでは、新規性や他人の権利との衝突などの実体的な審査は行われませんが、願書や添付書類などが所定の要件を満たしているかどうか、明らかに登録の障害となる要件に該当しないかどうかの予備審査が行われます。すなわち、予備審査のみが行われます(専利法第40条、専利法実施細則第44条を参照)。

中国では、実体審査が行われないため、意匠権が付与された後、意匠権者や利害関係者は、意匠権評価報告書の作成を中国国家知識産権局に依頼することができ、報告書を侵害訴訟などの証拠として活用することができます。

【メリット】
予備審査のみが行われるため、登録手続きが簡略化され、迅速な意匠登録が可能です。審査期間が短いため、意匠を早く市場に投入し、競争力を発揮することができます。

【デメリット】
予備審査では実体的な要件が審査されないため、他人の権利を侵害する可能性があります。登録無効のリスクが存在し、登録後に問題が発生する可能性があります。

秘密意匠

日本

日本の秘密意匠制度とは、出願人が要求した場合に、意匠登録の日から最大3年間、登録意匠の内容を公開せずに秘密に保持する制度です(意匠法第14条1項)。秘密期間終了後は、通常の意匠と同様に公開されます(意匠法第20条4項)。

【メリット】
・登録意匠の実質部分を非公開にすることで、他者による模倣や盗用のリスクを低減できます。

・秘密意匠の請求により、意匠の内容が公開されず、新製品のデザインが事前に露出されることを防ぐことができます。

【デメリット】
・秘密意匠の権利行使には、特許庁長官の証明を受けた書類が必要です。

・秘密意匠の権利が侵害された場合、過失が推定されません。

中国

中国では、秘密意匠制度は存在しません。

【メリット】
・透明性と公正性について、秘密意匠制度が存在しないことで、意匠出願や登録手続きは透明で公正なプロセスになります。出願者や他の利害関係者は、登録された意匠の情報を適切に把握することができます。

・知識の共有と技術の発展について、秘密意匠制度がないことで、意匠情報が公開され、他のデザイナーや企業がそれを参考にすることが可能です。これにより、デザインのアイデアや技術の共有が促進され、産業全体の発展に寄与することになります。

【デメリット】
・秘密意匠制度がないため、登録時点から意匠が公開されます。これにより、他者による模倣や盗用のリスクが高まります。

・秘密意匠制度がないため、早期に模倣されることによって企業やデザイナーの独自性や競争力を弱化させる可能性があります。

以上

SHARE
BACK TO INDEX

RELATED

関連コラム

CONTACT

お問い合わせ

特許・意匠・商標の国内・国外出願に関するご依頼はフォームよりお問い合わせください。