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脱炭素技術について

目次

国際的に脱炭素化の機運が高まる中、日本は2021年に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。グリーン成長戦略では、14分野について実行計画が策定されています。資源エネルギー庁は、その14分野について、日本の知財競争力のデータを公表しています。
カーボンニュートラルの実現には、14分野の成長は欠かせません。日本の現状を確認するために、世界の知財競争力をご紹介します。

成長が期待される14の重要分野

2020年10月、菅総理大臣(当時)は、所信表明演説において、「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。その後、2021年10月に2050年カーボンニュートラルに向けた基本的な考え方などを示す「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定し、国連へ提出しました。これを踏まえて、経済産業省が中心となり「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されました。グリーン成長戦略では、成長が期待される14の重要分野について実行計画が策定されています。
このように脱炭素化は、産業政策の観点からも重要な政策テーマとなっています。昨年(令和4年)、自民党の政務調査会が10月に公表した「新たな総合経済対策に向けた提言」においても、環境部会、外交部会、財務金融部会、文部科学部会、農林部会、水産部会、国土交通部会、および経済産業部会が脱炭素・GX(グリーントランスフォーメーション)の促進を提言しています。

資源エネルギー庁は、2021年版「エネルギー白書」で、成長が期待される重要な14分野について、日本の知財競争力が2021年9月時点で、どの程度であるのか、主要7カ国・地域(米国、中国、韓国、台湾、英国、ドイツ、フランス)と比較したデータを紹介しています。
「エネルギー白書」では、特許を対象に企業ごとに集計した指標「トータルパテントアセット」を、企業国籍別で再集計することで国・地域別の特許競争力の順位付けを試みています。

※トータルパテントアセット:2010~2019年までの10年間で各国に出願された出願を対象に、以下の各項目を評価し、それぞれの特許の残存年数とかけあわせたもの
・各分野の特許数
・特許への注目度(他社閲覧回数、情報提供回数など)
・特許の排他性(他社拒絶査定引用回数、無効審判請求回数など)

以下、北浜国際特許事務所が注目している「水素産業」「自動車・蓄電池産業」「半導体・情報通信産業」「物流・人流・土木インフラ産業」「カーボンリサイクル産業」「住宅・建築物/次世代型太陽光」「資源循環関連産業」の7分野の評価結果を紹介します。

当所が注目している7分野の評価結果

水素産業
水素産業

水素産業は中国・米国を大きく引き離し、日本が首位に立っています。
日本は、自動車メーカー3社(トヨタ自動車株式会社・日産自動車株式会社・本田技研工業株式会社)による燃料電池自動車関連の特許がけん引しており、トータルパテントアセットでは、トヨタ自動車株式会社が首位。また、トータルパテントアセットの上位20位以内に日本企業が9社ランクインしており、約半数を占めています。

トータルパテントアセット上位企業20社
(出典)アスタミューゼ株式会社
自動車・蓄電池産業
自動車・蓄電池産業

水素産業に続き自動車・蓄電池産業においても日本が首位であり、中国・米国を大きく引き離しています。
特許の出願人別では、各国の自動車メーカーが上位を占め、電池メーカー・部素材メーカーがその後に並んでいます。特許の多くは燃料電池に関するものであり、燃料電池は水素を扱うため水素産業と共に自動車・蓄電池産業においても日本が首位になっているものと考えられます。
水素産業、自動車・蓄電池産業の動向から、日本は自動車メーカーによる燃料電池自動車の研究・開発が他国よりも活発であることがわかります。

半導体・情報通信産業
半導体・情報通信産業

半導体・情報通信産業は、パワー半導体などの分野がけん引する形で日本が首位となっていますが、米国・中国との差はわずかです。特許出願人の上位50社中、19社を日本企業が占めており、半導体の素材から製造装置、情報通信機器・システムまで、幅広い企業が入っています。2位の米国は、出願数は少ないものの、特許の注目度や排他性などが高いため、知財競争力が高くなっています。中国は半導体の国産化を国家政策として進めており、政府が国有企業に巨額の出資をしています。その結果、日本や米国に肉薄する状況となっています。

物流・人流・土木インフラ産業
物流・人流・土木インフラ産業

物流・人流・土木インフラ産業において、中国が他の国を大きく引き離して首位となっています。日本は、首位の中国はもとより、2位の米国からも大きく離され、4位です。
この分野では、陸上運輸に関わっている自動車や重電機器(大型電気機械)の企業、物流部門の企業が上位にランクインしています。中国は特許出願数が多く、特許の注目度や排他性なども高いため、首位となっています。

カーボンリサイクル産業
カーボンリサイクル産業

「カーボンニュートラル」の実現のカギを握るテクノロジーの一つが「カーボンリサイクル」です。直接的にCO2削減に貢献できるのはもちろん、水素や再生可能エネルギーとの活用・相乗効果も期待できるためです。
しかし、カーボンリサイクル産業において日本は3位であり、中国・米国から大きく離されています。
CO2を資源として有効活用する技術である「カーボンリサイクル」の分野では、現在、CO2の分離・回収技術や、CO2を燃料に転換するバイオ燃料が実用化されており、これらの特許を有する企業や国が上位を占めています。
トータルパテントアセットによれば、現在実用化されている技術分野に強い米国のExxon Mobile Corporationが首位ですが、日本企業も2位にCCS技術に秀でた三菱重工業株式会社が入っています。

カーボンリサイクルに関わる特許出願人ごとのトータルパテントアセット
(出典)アスタミューゼ株式会社
住宅・建築物/次世代型太陽光
住宅・建築物/次世代型太陽光

住宅・建築物/次世代型太陽光において、日本は2位と上位ながら首位の中国から大きく離されています。
この分野では、太陽光発電関係の特許が上位を占めており、中国は特許出願数が多く、特許の注目度や排他性なども高いため、首位に立っています。

従来、太陽光パネルの開発・実用化は日本が先行し、2000年代には京セラやシャープなどの日本勢が世界で50%のシェアを持っていました。しかし、国からの補助を受けた中国企業が低価格で量産し、今では市場シェアの8割超を占め、日本勢の多くが撤退しています。

資源循環関連産業
資源循環関連産業

資源循環関連産業において日本は中国・米国から大きく離され、4位です。

ゴミや汚泥処理などに関わる技術の特許を分析した結果、特許出願数の多い中国が首位に立っています。中国では、都市域の人口集中や農村地域の経済活動の進展に伴い、水資源不足および廃棄物の増加が深刻な問題となっています。これを受けて、中国政府は、2008年に環境保護局を環境保護部に格上げし、国家政策として汚染問題に取り組む体制を構築しました。環境に対する取組みの国策化が特許出願件数の増加の一因ではないかと思われます。この分野では、国を問わず大学・研究機関  が上位を占めています。

以上のように、日本は、「水素産業」「自動車・蓄電池産業」で首位であり、中国・米国に対して優位な状況となっています。「半導体・情報通信産業」に関しては、首位ではあるものの、中国・米国との差はわずかです。「住宅・建築物/次世代型太陽光」に関しては、僅差で米国を上回るものの、中国からは大きく後れを取っています。また、「物流・人流・土木インフラ産業」「カーボンリサイクル産業」「資源循環関連産業」に関しては、米国・中国から大きく後れを取っています。

その他の分野

ここでは詳細を示しませんが、「洋上風力産業」「燃料アンモニア産業」「原子力産業」「船舶産業」「航空機産業」「ライフスタイル関連産業」の日本の知財競争力の概要は以下のとおりです。

「洋上風力産業」
日本は2位であるものの、首位の中国に大きく離されています。

「燃料アンモニア産業」
日本は3位であり、米国・中国に大きく離されています。

「原子力産業」
日本は3位であり、米国・中国に大きく離されています。

「船舶産業」
日本は3位であり、2位の米国・4位の中国とは僅差です。船舶専業は、韓国が他国を引き離して首位となっています。

「航空機産業」
日本は3位であり、首位の米国に大きく離されています。

「ライフスタイル関連産業」
日本は3位であり、米国・中国に大きく離されています。

まとめ

現状では、成長が期待される14の重要分野のうち、「水素産業」「自動車・蓄電池産業」「半導体・情報通信産業」「食料・農林水産」以外の分野の知財競争力が比較的弱いという結果となっています。グリーン成長戦略では、「成長が期待される産業(14分野)において、高い目標を設定し、あらゆる政策を総動員する」ことが謳われており、今後の成長が期待されます。

引用元
「知財」で見る、世界の脱炭素技術
前編:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/chizai_01.html
後編:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/chizai_02.html
※当所にてデザイン加工を行っています

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